取組内容について

「静清会」は、特別養護老人ホームや学老所などの運営を主体とする社会福祉法人。知識・経験・思いをプレゼントしてくれる人とつながり、共に知り・伝え・共有する。そんな支え合いの連鎖が生まれることを目指した「プレゼント・バンク」の活動も行うことで、地域の人々や近隣の学校、子どもたちとのつながりを大切にしている法人です。

子どもを持つ女性が安心して仕事をできる職場を目指しており、職員自身の親の介護や子育て、健康等についての相談をいつでも気軽にできる環境を整えています。また、産休・育児・介護休暇の取得を、正規・非正規問わず奨励しており、2017年10月現在、6名が取得中です。

女性理事長・施設長が誕生し、女性がさらに仕事しやすい環境に

2017年夏に、女性理事長に池谷百合江さんが、女性施設長に岩本侑子さんが抜擢されました。それまでは、男性が理事長や施設長を務めていましたが、お年寄りの終末期ケアも対応するだけに、看護師資格を持つ職員が役職に就いた方がという意見が出たそうです。また、女性管理職、理事、評議員の女性比率が半数以上と高い比率を誇ります。

新施設長・岩本さんの就任により、新しい取組みもスタート。「いいケア」をするためには「居心地のいい場」が必要と考え、(1)会議へのおやつの持込解禁、(2)受付にウォーターサーバーを置いて業者やボランティアに感謝の気持ちを表す、(3)夏休み期間中、親子で出勤可能、(4)「お互いさま」の気持ちで休み希望2日以上も応相談、(5)スタッフ専用スペースにパソコンを増設、(6)スタッフ休憩室のリノベーション、(7)服装規定の改正といったことを提言。女性ならではのアイデアと嬉しい試みです。

施設長の岩本さん自身も、小学生2人のお子さんを育てるお母さんの顔を持ちます。「静清会」は、2006年に敷地隣の一軒屋をリノベーションして開設した託児施設を持っており、岩本さんはその初めての利用者。首が座った頃から3歳まで預けられ、一時利用も可。しかも職場のすぐ横というのは産後のお母さんにも安心です。また、小学校・保育園も徒歩圏内なのも魅力的です。
「一人めの子どもが生まれた時、託児所つきで働ける職場を探していました。他にも、託児所付きだからと転職を選んだ職員もいるようです。実際、求人での問い合わせでも託児所について聞かれることは多いですね」と岩本さんは話します。

介護施設なので、夜勤勤務もあります。妊娠・育児中の場合、夜勤勤務が難しい場合も多いので、日勤のみのデイサービスの施設へ配置転換したり、希望に応じてシフトが選びやすいパート勤務へ転換することも可能。極力、個々の事情に応じています。
「介護は、力を使う仕事もあるので、妊娠中の場合は、力を使わない作業をしてもらうなど、周囲が自然と配慮する雰囲気があります」と施設長の岩本さん。介護の仕事に従事するだけあって、働く職員も気遣う心を持っているようです。介護職員をまとめるリーダーも、産休を取得経験者であり、職員のお母さん・お姉さんのような存在。育休取得者の復帰率はほぼ100%なのだとか。離職率が高いと言われる介護業界ですが、「静清会」で働く女性職員は、新卒で入社した後、結婚、妊娠、そして産休を取得するなど長く働き続ける女性が多いようです。復帰前には、子育て経験がある上司が電話などで働き方についてアドバイス。復帰しやすい環境・雰囲気が整っていると言えます。

女性理事長・施設長が誕生し、女性がさらに仕事しやすい環境に
10代〜70代まで女性が長く活躍できる仕事。正社員への転換を積極的に応援

10代〜70代まで女性が長く活躍できる仕事。正社員への転換を積極的に応援

2017年には、中途入社の3人の女性が正社員になりました。そのうち一人は、子育て中のお母さんとのこと。「可能ならば、正社員になってほしいと思っています」と理事長の池谷さんは話します。正社員登用にも積極的な法人です。

「静清会」には、高卒入社の18歳から78歳の女性まで、幅広い年代のスタッフが働いています。78歳の女性スタッフは、介護現場の見守りや若いスタッフのフォローを担っているそう。力仕事のイメージがある介護現場ですが、仕事内容はそれだけに留まらず、年齢を経てもスタイルを変えつつ働き続けられます。

また、希望すれば定年時の給与を維持したまま、定年後も同じ仕事をすることが可能で、そういった働き方をしている女性が10人以上はいるとのこと。他で定年退職した後に転職してくるスタッフもいるそうで、女性が長く活躍しています。

月数回の社内研修、社外研修への積極的な案内でスキルアップへ

月数回の社内研修、社外研修への積極的な案内でスキルアップへ

月に数回、社内で技術・知識習得のための研修を実施。また、社外研修も積極的に案内し、勤務扱いとして研修費用や交通費を負担しています。仕事に役立つものなら、案内以外の希望する社外研修の費用負担も行っているそう。スキルをブラッシュアップできる場が多く設けられているので、経験が少ない人にも安心です。

「静清会」では、介護現場未経験者の採用も積極的に行なっており、現場の介護スタッフには「介護職員処遇改善加算」による加算手当(正社員:月額34,000円)を基本給に加え、別途支給。職員の中には、40代の女性が未経験から介護現場に入り、介護福祉士の資格取得に向け、勉強しているという人もいるそうです。

「リビング・ライブラリー」の導入や、「好き」「得意」を仕事に活かす取組を実施

最近、介護休暇を取得するスタッフが増えてきているそうです。「静清会」では、職員自身の介護休暇取得も奨励しています。自分が直に介護を通して得た経験を、職場で話す「リビング・ライブラリー」(=「生きている本」の意。人が本となり、経験や感じたことを人に語ることを目的としている)を採り入れており、たとえば数時間の病院の付添であれば研修扱いとすることも可能。このような取組を職場で導入するところはまだまだ少ないのではということ。他企業にもぜひ応用してほしい取組だと思います。

また、「好きなこと」「得意なこと」を活かした提案・働き方をすることが可能。たくさんの緑に囲まれた音楽が流れるくつろぎ空間を作る「100本の音木プロジェクト」、インテリア好きの職員が自宅にいる時と同じようにくつろいでもらえるように考案した「町家づくりプロジェクト」、地域の子どもたちと一緒に作る「こどもマルシェ」「キッズヘルパー」「こども施設長」、お年寄りや地域のお母さんなどとの触れ合いを考えた「アロママッサージ」など、これまでに職員のアイデアを活かした数々のプロジェクトを実施。好きなことが仕事に転換できる面白い活動です。こういったプロジェクトを提案する「プレゼント・バンク」事務局があるので、日々職員から新しい企画が立案されているようです。

「リビング・ライブラリー」の導入や、「好き」「得意」を仕事に活かす取組を実施

取組によって得られた声

介護スタッフ

高橋 千名美さん

入社4年目 パート社員
34才
義父母、夫、小学2年生の男の子、年中の女の子の6人家族

「子どもを持ちながら働ける職場と知っていたので、出産後に復職しました。」

「もともとこちらの職員として勤務していたのですが、出産を機に一度退職しました。上の子が幼稚園に上がったのを機に、再就職をと考え、思い浮かんだのは前の職場だった静清会。働いていた当時から、子どもが急病で休んでも周囲が快くフォローしてくれる雰囲気があったので、復職するならここしかないと思いました。2人の子どもを育てながら、自分らしい働き方ができるので仕事しやすいですね。」

取組企業からの声

理事長 池谷 百合江 / 施設長 岩本 侑子

「女性が主体の職場だから、妊娠・育児・介護に理解があります。」

「70%以上が女性という職場です。お姉さん、お母さん、おばあちゃんのような存在の先輩職員がいるので、仕事の相談はもちろん、さまざまな経験を得ている人生の先輩としての相談も気軽にできる雰囲気です。仕事と家事と育児・介護を両立させながら働けますし、リーダー・管理職にもどんどんチャレンジしていってほしいと思っています。」

取材メモ(編集後記)

これまでにさまざまな介護現場を訪問してきましたが、訪問した際に温かい雰囲気がある施設だなと感じました。特別養護老人ホームに100名、ショートステイに40名、デイサービスに54名と、合計200名近い人数のお年寄りを受け入れ可能な施設なだけに、施設は非常に広くなっています。それだけに温かい雰囲気を作り出すのは、それなりに工夫が必要なはず。女性が輝ける職場にするための取組内容を聞いて、納得しました。女性理事長・施設長が就任してまだ数か月ですので、今後の変化にもとても期待が持てそうです。

(文責:河田良子)

社会福祉法人 静清会

所在地
静岡市清水区折戸5丁目18番36号
業種
福祉・介護
従業員数
128名 

男性33名、女性95名[正社員63名、パート社員32名]
※2017年10月30日時点

※人数は取材時のものです

設立年月日
1998年3月
ウェブサイト
http://www.hagoromono-sono.jp/
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