取組内容について

「株式会社セイセイサーバー(以下、セイセイサーバー)」は、ビルの総合管理を行う会社。設備保守管理、清掃管理、保安業務、環境衛生管理、リフォーム、マンション管理業務などから、家庭向けにはエアコンクリーニング、ハウスクリーニング、害虫駆除、片付け代行、お墓清掃などにも対応しています。
2017年に長田きみのさんが社長に就任。女性従業員が全体の40%を占めることから、2018年に女性社員による「セイセイガールズプロジェクト」を立ち上げ、現場の声をヒアリングする場を創出。よりよい職場環境の実現を目指して、離職率の低減や社員同士の意思疎通の向上につながる活動を行ってきました。これらの成果により、従業員が働きやすい労働環境を整え、勤続1年未満の離職率が5%低下、有給休暇消化率の上昇へとつながりました。2024年からは、「ハッピープロジェクト」として、性別、年齢、国籍、障がいの有無に関係なくすべての従業員が働きやすい職場環境の実現と社内の課題解決を目指す取り組みを行っています。
そんな「セイセイサーバー」の取り組みを詳しくご紹介していきます。

【ルール・環境の整備】ガールズプロジェクトにより、現場の声を傾聴する機会をつくる。風通しのよい会社に

静岡県内全域に渡り、ビルの総合管理等を行う「セイセイサーバー」。本社は静岡市にありますが、担当クライアントの近隣エリアに居住する方が多く、現場で働く方は基本的に直行直帰になっています。本社を訪れる機会が少なく、本社従業員と現場従業員との距離感が課題となっていました。そこで2021年に立ち上げたのが、女性社員による「セイセイガールズプロジェクト」。女性活躍推進を裏ミッションに「誰もが生き生きと働ける職場づくりをして離職率低下につなげたい」という思いがありました。本社・現場、それぞれの従業員の方に集まってもらい、マナー教室を実施したり、座談会を開催したりすることで、意見交換の場を創出しました。現在は、より多様なメンバー構成による「ハッピープロジェクト」が、その活動を継承しています。

【ルール・環境の整備】ガールズプロジェクトにより、現場の声を傾聴する機会をつくる。風通しのよい会社に

  • ①定期的な巡回で現場の生の声を収集……県内全域にある各現場へ担当者をはじめ社長やプロジェクトメンバーも定期的に訪問し、従業員からヒアリング。それらの声の中から改善すべき点を拾い上げ、制度や仕組みの改正へとつなげています。
  • ②昼食会や年末年始の集いなどの職場懇親会、お楽しみ抽選会を実施……長田社長が現場を訪問し、現場従業員と昼食会を開催。また、社長が釣った魚や育てた野菜などをプレゼントする抽選会を実施。社長とガールズプロジェクトメンバーがプレゼント当選者の現場を訪れ、意見交換する場やコミュニケーションの機会を増やし、帰属意識を高めることへとつなげてきました。
  • ③意見が通りやすい職場に……日々の業務に追われ、普段はなかなか意見を出す機会がありませんでしたが、昼食会や年末年始の集いを通して社長や本社従業員と直接話す機会が増え、意見を言いやすい雰囲気に。要望から生まれた改善点のひとつに男女別制服制度の撤廃があります。男性はネイビーの制服、女性は水色の制服という性別による指定を廃止し、どちらを着ても良いようになりました。
  • ④産後パパ育休制度などの働きやすい制度の整備……継続して活躍できるための取り組みとして、育児休業制度、出生時育児休業制度(産後パパ育休制度)、介護休業制度、子の看護休暇・介護休暇制度、高年齢期短時間勤務制度を整備しています。外国人の男性が産後4週間の産後パパ育休を利用した実績もあります。
  • ⑤猛暑対策……ネッククーラーを全現場従業員に配布。非常に好評でした。また、空調服が欲しいという要望も出たため、必要な現場に配布。現場ごとに意見を聞き、働きやすくなるために必要な備品も整備しています。
  • ⑥健康経営優良法人に認定……人間ドック受診制度など従業員の健康管理に注力。健康増進のため月1度の定時退社日を設けているほか、有給休暇取得指定日や取得推奨日を設定して長期休暇取得を促進。また、産業医によるストレスチェックの実施や、産業カウンセラー資格を有する従業員を採用し、職場のメンタルヘルスケアができる体制を整えています。
【キャリアアップ体制】評価基準を明確にし、モチベーションアップへ。資格手当の支給でキャリアップを目指す人も増加

【キャリアアップ体制】評価基準を明確にし、モチベーションアップへ。資格手当の支給でキャリアップを目指す人も増加

2022年頃より、本社および現場部門スタッフの人事評価制度を整備。従来は、正社員から嘱託社員に移行した際に資格手当がつかなかったり、評価基準も曖昧な制度でした。現場からの改善要望も踏まえ、公平で明確な基準で評価を行い、その結果に基づき昇格、定期昇給、賞与支給を実施するようになりました。

  • ①評価制度の導入……従来は担当者による属人的な評価になっており、賞与の評価基準が不明瞭になっていました。こういうところを評価して欲しいという現場からの声を積極採用。明確な基準を設け、評価する仕組みを整えました。
  • ②資格取得の報奨金や資格手当を支給……従業員の資格取得支援のため、パート社員も含めて、87種類の資格に対して報奨金や資格手当を支給しています。特に、電気工事士や電気主任技術者などインフラに関わる資格は業務を行う上でも必要な資格。手当を支給することで、自主的に取得する方が増えました。
  • ③シニアも公平に働ける仕組み……65歳で嘱託社員になると、給与は変わらないものの、資格手当がなくなっていました。現場から高齢になっても同じように働けるようにしてほしいという要望が出たことから、嘱託社員にも資格手当の支給を開始しました。現在では、定年時の基本給を維持し、正社員同様に各種手当を支給しています。
  • ④社員のスキルアップのためのセミナーを開催……社内研修会「省エネセミナー」を毎年開催し、省エネルギー化、環境関連法案、エネルギーシステム等の理解を深めるセミナーを毎年開催。クライアントのカーボンニュートラルに貢献できる提案をできるよう、従業員の知識アップにつなげています。

【社内推進体制】職場改善提案者の表彰や社内報の発行で帰属意識アップへ

従業員からのちょっとした提案も、業務の効率化につながります。環境改善、作業改善など、さまざまな提案をあげてもらい、優秀な提案者には報奨金を支給。また、本社と現場との距離感を縮めるために、社内報を発行しています。

【社内推進体制】職場改善提案者の表彰や社内報の発行で帰属意識アップへ

  • ①優秀な職場改善提案者を表彰……従業員から職場の改善提案を募る「職場改善提案制度」があり、小さなことでも、すぐ改善するようにしています。この制度自体は30年以上続く制度。作業環境の改善、オペレーションの変更、作業用具の発明など、さまざまな提案が提出されています。良い提案を提出した方には報賞金を出しています。
  • ②社内報を通じて帰属意識アップへ……40年以上毎月発行している社内報「あかしや」は、給与明細と一緒に従業員の自宅に郵送しています。社長や従業員の思いや考え方を伝え、ハラスメント防止や育児・介護休暇制度、安全衛生管理の周知、プレゼント企画やイベント等の情報等を記載。帰属意識を高めることへとつなげています。
多様な人材の活躍推進体制

多様な人材の活躍推進体制

リモートワーク社員、時短勤務、フレックス勤務、直行直帰、現役スポーツ活動と仕事の両立など、多様な働き方が可能になっています。また、外国人や障がい者、シニアも積極採用。外国人従業員には、社員寮の用意、行政手続きから日常生活のサポート、日本語研修など、外国人が働きやすい仕組みも整備しています。
多様な人材が活躍する企業として、「女性活躍推進企業 えるぼし3」に認定され、「令和四年度 高齢者活躍企業コンテスト 高齢・障害・求職者雇用支援機構 理事⾧優秀賞(厚生労働省)」および「令和五年度 男女共同参画社会づくりに関する知事褒章」も受賞しています。

  • ①県外在住の従業員がリモートワーク……本社所属の正社員として東京で採用された女性従業員は、2017年の入社当時からリモートワーク。ご主人の転勤に伴い、大阪や広島へと居住地を変えながらも現在も月1、2回程度静岡に出社しつつ、リモートワークを続けています。
  • ②嘱託社員のリモートワーク……定年後に嘱託社員として働いていたシニアの女性従業員から、自宅で孫の面倒を見ながらリモートワークに変更したいという希望があった際も柔軟に対応しています。
  • ③スポーツ選手と正社員の両立……スポーツ選手として活躍する従業員も正社員として採用しています。土日や平日の夜に試合があり、時折、平日にリハビリなどに行くことも。フレックス制度をうまく活用し、正社員として勤務しています。柔軟な働き方に対応し、ダブルワークを可能としている点は特筆すべきです。
  • ④その他の多様な勤務スタイル……高齢で朝の通勤ラッシュがたいへんなため、フレックス制度を利用し、出勤時間をずらしたり、セイセイサーバーの店舗へ直行直帰で勤務したりなど、個々の事情に応じた柔軟な働き方が可能になっています。
  • ⑤外国人を正社員として採用……外国人正社員(高度人材採用)として、モンゴル人3名、ネパール人4名を採用しています。採用をするのであれば日本人と外国人の垣根をなくして働ける環境をと、2021年から採用をスタートし、年1〜2名を採用しています。(2024年10月1日時点)
  • ⑥外国人への手厚いサポート……受け入れから日常生活に至るまで手厚いサポートを行っています。外国人従業員の社宅(個室・家財家電完備)を用意し、行政手続きのサポートから運転免許取得の補助も。また、成田空港への出迎え、買物への同行、保育園探しの手伝いなど、日本で暮らし、働いていくために丁寧なサポートを行っています。
  • ⑦外国人も働きやすい環境づくり……外国人懇親会や外国人従業員を講師とした日本語研修も実施しています。言語や文化の壁を越えて、従業員同士がリラックスした雰囲気の中で交流する機会を設けています。
  • ⑧障がい者も正社員に採用……グループ傘下の「NPO法人セイセイ生き生きクラブ」が「就労支援事業所ハートランド(以下、「ハートランド」)を運営していることから、「ハートランド」の利用者の正社員登用も行っています。「セイセイサーバー」と隣接していることもあり、利用者にとっては「セイセイサーバー」は憧れの就職先になっているそうです。
  • ⑨高齢従業員の再雇用……高齢従業員の再雇用やセカンドキャリア採用も積極的に行っています。高齢者(60歳以上)の従業員比率47.8%、本社正社員のセカンドキャリア採用20%と非常に高く、60歳以上が従業員数の47.8%を占めています。(2024年10月1日時点)
  • ⑩多様な人材が働きやすい環境整備……通勤が困難な外国人や障がい者の従業員に対して通勤送迎も実施。また、体力的な面で現在の仕事が大変になった場合は、より負荷の少ない職場またはグループ間での異動(「ハートランド」で障がい者の生活を教える支援員など)も勧奨しています。

今後の課題・予定

2022年に静岡市のDX支援プログラムに参画し、外部コンサルとともにDX推進を実施。プログラム終了後も引き続き推進を進め、業務の棚卸しを実施中です。ただし、スマートフォンを持っていない従業員も多く、勤怠管理、人事、労務、販売管理などにはまだまだ課題も。今後も引き続き推進を続けていく予定です。

取組によって得られた声

業務部 現場管理者

バイジャ・ケシュ・クマリさん

2022年度入社

2021年に東京で「セイセイサーバー」のアルバイトとして働きはじめ、2022年から正社員に。それに伴い、静岡にある会社の社宅に移りました。清掃管理グループに配属され、日本人の先輩方にさまざまな仕事を教わりながら、現在はいくつかの現場を管理する仕事を任せてもらっています。

管理者ですが、上司や現場の皆さんにいつも助けてもらいながら頑張っています。はじめはネパール人の従業員は私1人でしたが、今は他にも3人いるので心強いですね。安心して働くことができる職場です。

業務部 現場管理者

近藤 千和さん

2024年度入社

会社員とチアリーダーという二足の草鞋を履いた生活をしています。昨年、パフォーマンス中に大怪我をしてしまい、週1~2回の通院やリハビリを行いながら勤務しています。

平日は夕方から練習に参加するため、通常の定時退社では両立することがなかなか難しいと悩んでいたのですが、そんな私を快く受け入れていただき、生活スタイルにあった働き方を提案してくれたのが「セイセイサーバー」でした。

フレックスタイム制を利用し、それぞれのバランスをとりながら仕事をすることができています。在宅ワークや直行直帰にも対応してくれるため、常に働き方に選択肢がある環境はとても助かっていますね。また、一緒に働く上司や先輩も私の働き方に理解があり、むしろ応援をしてくれているので後ろめたさなどもなく安心して働くことができています。

今後も仕事や家庭など、生活スタイルに変化があっても都度バランスを保ちながら仕事を続けていけると思える職場。とてもありがたいなと思っています。

取組企業からの声

代表取締役社長

長田 きみのさん

それぞれの強みを活かし、多様な人材が活躍できる環境づくりに力を入れたい

2012年に当社に入社し、2017年に社長に就任しました。その前は他社で働いていたこともあり、足りない部分がよく見えました。満足できる職場をつくるのはなかなか難しいですが、従業員一人ひとりの声を聞き、みんなで考え、満足する会社に近づいていければと考えています。従業員は大切な存在で、そしてその従業員からの提案は当社の財産でもあります。この提案による改善は、若い世代にも継承され、現場の活性化に役立っています。

また、多様な人材として、外国の方や障がいのある方からも求められる会社として、それぞれの強みを活かし、活躍できる環境づくりに力を入れていきたいと思います。

取材メモ(編集後記)

長田社長は従業員の誕生月に手書きの誕生日メッセージを作成し、渡しているそうです。372名の従業員がいるため、決して簡単なことではありません。また、外国人従業員の暮らしが少しでも不便のないようにと、社内で不用品を募るなどさまざまなところで社長をはじめ、従業員のみなさんの優しさを感じました。そして、パートやアルバイトでのダブルワークは珍しくありませんが、正社員として勤務しながらダブルワークを希望する社員を採用したり、県外在住の方を従業員としてリモートワーク勤務にしているなど、個々に合わせた柔軟な働き方を可能にしている点は注目すべき点だと思います。

(文責:河田良子)

株式会社セイセイサーバー

所在地
静岡市清水区川原町1-9
電話番号
054-351-2530
業種
サービス業(建物サービス業)
従業員数
372名 

男性134名、女性238名
(正社員/男性31名、女性14名【うち管理職/男性4名、女性1名】、嘱託社員/男性22名、女性4名、契約社員/男性12名、女性14名、パート・アルバイト/男性69名、女性206名、)

※人数は取材時のものです

設立年月日
1965年12月16日
ウェブサイト
http://www.seisei-server.co.jp
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