取組内容について

「木内建設株式会社(以下、木内建設)」は、サッカー場や静岡県庁別館をはじめ、静岡県のランドマークをつくるなど創業100年を超える老舗ゼネコン。総合建設業(建築工事、土木工事他)、不動産業、プレキャストコンクリート事業などを手がけ、建設関連事業の総合プランナーとして活躍。静岡県内をはじめ、首都圏、中京圏にも舞台を広げ、マンションやショッピングセンターなども手掛けています。

建設業界には3K(きつい・汚い・危険)のイメージが未だ根強く、建築業界を志す若い世代、女性が少ないという課題を持っていました。快適に働きたい、ワークライフバランスを重視したいという意見も色濃くなりつつある近年だからこそ、企業イメージを高めるためにも、働きやすい環境整備が急務となってきていました。そこで、「木内建設」では産業看護師を新たに採用。社員の健康保持・増進を目指すことで、いきいきと働きやすい環境の用意を整えました。その仕組みをご紹介します。

体調を崩す社員をサポートするため、産業看護師を採用し、健康相談室を開設

建設業界の現場作業は、屋外での作業となるため夏は暑く、冬は寒い中で作業する必要があります。また、天候やトラブルにより工事が遅れることで、休みが取りづらくなるという課題がありました。気候変動に伴う厳しい環境の中で働かざるを得ないため、体調を崩したり、ストレスによるメンタル不全を起こす社員が出たりするのは、建設業界全体における問題点でもあります。

「木内建設」では、少しでも社員が働きやすい環境を用意できればと、「健康経営優良法人」の認証取得を目指し、社員の健康を考え、ワークライフバランスを重視した快適な職場環境づくりをすることを決意。2022年1月に産業看護師の玉川美帆さんを採用し、同年5月に健康相談室を開設。社員の健康改善のためのさまざまな取り組みがスタートしました。なお、健康経営優良法人は取組実施から1年目に認証取得を実現しています。

体調を崩す社員をサポートするため、産業看護師を採用し、健康相談室を開設

  • 健康相談室……週3日開設しており、ひと月の相談件数は30名ほど。自分自身の体の不調はもちろん、家族の健康や子育ての悩みなど相談内容は多岐に渡ります。メタボ対策が必要な方には定期的に体重測定や食事管理など手厚いサポートを行うことにより、特定保健指導実施率は49%と約半数になっています。また、本社の会議室を利用して相談を行っていますが、対面はもちろん、各拠店からの相談はオンラインも可能としています。
  • 医療機関への予約と付き添い……医療機関への予約も玉川さんが行ってくれるので安心。また、病院への付き添いも行い、特にメンタル面で病院を訪れる場合は、休職せずに仕事を続けられることが可能かどうかも踏まえ、対応しているようです。東京勤務の従業員に対しては、病院に依頼し、オンライン参加を行うなど、手厚くサポートをしています。
  • 相談窓口の設置……ハラスメントやメンタルヘルス、コンプライアンスの相談などができる窓口を社内ポータルサイトに設置し、メールで相談できるようにしています。
禁煙セミナー、婦人科セミナーなど専門家を招いたセミナーや働き方改革を実施

禁煙セミナー、婦人科セミナーなど専門家を招いたセミナーや働き方改革を実施

2022年から医師や専門家を招き、呼吸器(禁煙)、婦人科、メンタルヘルス、消化器、歯科をテーマとしたセミナーを開催し従業員のヘルスリテラシー向上に努めています。セミナーは、本社の大ホールで開催しています。対面やオンラインでの視聴のほか、後日録画視聴も可能で、個々の都合に合わせて情報を得られるようになっています。

また、感染症対策、生活習慣予防対策、熱中症対策、育児支援対策、長時間労働対策などを実施し、働く環境の改善に取り組んでいます。

  • 禁煙対策……全社での喫煙率が34%と高いこともあり、健康保険組合の保健師と連携して禁煙希望者を対象に禁煙対策を実施。途中で挫折しないよう、3人1組でグループになって取り組むなどの工夫をしています。また、専門医と連携し、喫煙者を禁煙外来の受診に導いています。
  • 婦人科セミナー……ホルモンの影響を受けやすい女性のライフサイクルと健康問題を理解することで女性の活躍の場を広げようという趣旨のもと開催。男性社員にも参加してもらうことで、女性社員との関わり方を知ってもらうほか、家庭におけるご家族との付き合い方の参考にしてもらいました。
  • 熱中症対策……現場や営業など屋外で仕事をする社員に向けた対策を実施。従来より行っている製氷機や扇風機の設置、空調服や経口補水液、タブレットの配布等に加え、2023年は冷却タオル、ネッククーラー、クールスプレー、ドリンクをセットにした熱中症対策キットの配布を行いました。
  • 長時間労働対策……従来から作業現場では工期との兼ね合いで休みが取りにくいという課題があったため、段階的に休日確保できるよう週休二日の実現に向けた行動宣言を出しました。宣言当初の2022年度では4週6休を目指すところから始まり、2024年4月には4週8休の実現を目指しています。他にも働き方改革委員会やICT推進委員会を設置し、計画有休制度、時間単位の有休制度の導入等も行っています。

育児休業取得で10万円支給。男性社員の育児休暇の取得推進と赤ちゃん訪問の実施

2022年10月、法改正で産後パパ育休制度が新設されたこともあり、男性の育休取得推進や育児支援対策として、新たな制度を導入しました。制度導入後、男性の育児休業期間は概ね10日〜1カ月程度となっています。また、妊活や育休についての情報を得られるよう、女性セミナーも実施しています。

育児休業取得で10万円支給。男性社員の育児休暇の取得推進と赤ちゃん訪問の実施

  • 育児休業取得で10万円支給……育児休業を取得すると、一時金として一子につき一律10万円支給。これにより男性の育休取得が飛躍的に増加しました。
  • 赤ちゃん訪問……生後1年までの乳児を持つ社員(男性・女性ともに)を対象に、産業看護師の玉川さんが産婦人科医及び助産師の監修による赤ちゃん訪問(赤ちゃんがいる自宅に訪問)を実施。地域によっては保健師による赤ちゃん訪問を実施しているところもありますが、赤ちゃんはもちろん、保護者の心身の様子や養育環境の把握、支援の必要の有無を確認し、関係機関との連絡調整等も行っています。悩み相談はもちろんのこと、パートナーの仕事内容について知ることもでき、特に男性社員の場合は一緒に立ち会うことで育児への関心が高まる機会になっています。赤ちゃん訪問を行うことで、家庭生活の安定に役立て、仕事のパフォーマンス向上へと繋げられるよう支援しています。
  • その他……妊活相談、育休相談、マタニティスクール、仕事復帰支援などのトータルサポートを行う機会を設けています。これらの支援は全社員を対象に行っています。

今後の課題・予定

多様な人材の活躍推進として、定年後の高齢者の活用をはかるとともに、女性技術者の採用強化に取り組んだり、障がい者雇用に力を入れたりしています。障がい者については、現在9人の採用を行っており、事務作業のほか、建物の清掃等を担う従業員もいるなど、それぞれの体調に合わせて円滑に仕事ができるよう産業看護師がサポートしています。

取組によって得られた声

総務経理部 経理課 副主任

千葉 勇希さん

2013年入社

2023年7月と8月に1週間ずつ育児休暇を取得しました。仕事への影響も踏まえ短期間でしたが、生後間もない赤ちゃんと過ごせた貴重な時間でした。実際に取得してから感じたことは、もっと長く家族で一緒に過ごしたいと思う気持ちが強かったです。育児の大変さを実感するのはまだまだこれからなので、取れるのであれば数週間と言わず、数ヶ月単位で取得し妻へのサポートをしたいと思いました。今後育児休暇の取得を考えている方には、実際に育児休暇を通して感じたことを共有し、周囲の理解を得て長期間の取得がしやすい職場環境づくりが大事だと思います。
また、赤ちゃん訪問は親身になって相談にのっていただけたのが嬉しかったです。ミルクの量やお風呂の入れ方、抱っこの仕方まで些細なことも相談できたので、自分自身の育児への関心を高めるきっかけにもなり、夫婦で一緒に話を聞くことで育児に対する不安が緩和できた良い機会になりました。

取組企業からの声

管理本部 副本部長 兼 人事企画部長 執行役員

横山 一さん

社内では心身の疾患による休職者が目立つようになり、年々増加傾向にあったため、企業として何かしらの対応をしなければと考えていました。
そこで、取り組みをはじめたのが健康経営です。生活習慣病対策や感染症予防対策、メンタルヘルスケア、ヘルスリテラシーの向上、禁煙対策など、従業員の健康保持・増進に取り組むことにより、個々のモチベーションやエンゲージメントの向上を通じて組織の活性化につながればと思っています。
また、当社では基本的に土日祝日に加え、年末年始、ゴールデンウィーク、お盆等、長期休暇の取得ができるようになっていますが、現場作業所では納期の関係もあり、どうしても休日に出勤しなければならないことがあります。若い世代は子どもの頃から週休2日の生活スタイルが定着しているため、いざ休日出勤を行うと、身体と気持ちの両面で大きな負荷が掛かっているように感じています。今後は、少しでもその負担を軽減できるようさらなる環境の整備に取り組んでいきたいです。

人事企画部 人事課 係長 産業看護師

玉川 美帆さん

以前は総合病院に勤務していたのですが、子育て中はパート勤務をしていました。子どもが成長し、そろそろ正社員に戻ろうと思ったのですが、思春期の子どもたちの様子を見ながら夜勤の仕事をするのは難しいのが現実でした。その後、自動車販売の健康保険組合に転職。ディーラーを周りながら、健康相談や保健指導を行っていました。静岡中部地区全域を担当しているなかで、もう少し一人ひとりと深く関わって個々に合ったサポートをしていきたいと考えるようになりました。そんな中、新型コロナウィルス職域接種のお手伝いをきっかけに木内建設の一員として迎えていただくこととなりました。
病院への予約や付き添いをするのは、社員ファーストが前提ではありますが、私自身にとっても情報収集ができ、知識・情報のアップデートができるメリットもあります。これからも、個々に寄り添いながら健康で安心して仕事を続けられるように導くサポートをしていきたいです。

取材メモ(編集後記)

建設業界は昔から厳しい仕事環境と言われていますが、これだけ手厚いサポートがあれば、働きやすさもずいぶん変わるのではと感じました。特に産業看護師の玉川さんが常駐し、気軽に健康相談ができる場所があるのは、社員にとってとても心強いことだと思います。
また、2021年に完成したばかりの新社屋は、フリーアドレス制できれいなオフィス。気分を変えて仕事をできる集中スペースや、打ち合わせや休憩がしやすいソファ席などが用意され、とても仕事がしやすそうな環境でした。社内にはカフェもあり、クライアントとの打ち合わせができたり、昼食をとったりできるようなスペースも用意されていました。

(文責:河田良子)

木内建設株式会社

所在地
静岡県静岡市駿河区国吉田1丁目7−37
電話番号
054-264-7111
業種
建設業
従業員数
568名 

男性483名、女性85名
(正社員/男性384名、女性50名、正社員以外/男性99名、女性35名、管理職/男性135名、女性0名)
※2023年8月31日時点

※人数は取材時のものです

設立年月日
1944年4月19日
ウェブサイト
https://www1.kiuchi.jp
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