
株式会社薩川組
- 所在地
- 静岡市清水区横砂南町14-1
- 電話番号
- 054-366-0315
- 業種
- 建設業
- 従業員数
- 29名
男性23名、女性6名
(正社員/男性23名、女性5名、派遣社員/女性1名、管理職/男性11名、女性2名)
※2024年9月30日時点※人数は取材時のものです
- 設立年月日
- 1966年3月26日
- ウェブサイト
- https://sazkawa.com
取組内容について
創業から111年を迎える「株式会社薩川組(以下、薩川組)」は、道路や海岸、ダムなどの公共土木工事から、橋梁・トンネルなどの土木構造物のリニューアル工事、鉄道工事、公共・鉄道施設の建設、注文住宅まで、幅広い分野の工事を行う建設業です。
2012年に発生した労働災害により、従業員が全身不随という重度の後遺症を負ってしまいました。その社員のために、本人にしかできないことを会社を挙げて模索。やがて鼻に貼ったセンサーを使用し、パソコン操作ができるようになるまでに。クラウドでデータ共有できるように整え、在宅勤務を始めました。工事資料の作成からスタートし、最近では会社パンフレットのデザイン、土木積算業務などスキルを上げていっています。また、労働災害の経験から今後の事故防止につながればと全国各地で安全講話を行い、その数は30回以上に及びます。
ほかにも現場技術者として女性を積極採用。業務に必要な資格取得には、勤務時間内に社長自らが従業員の勉強をみることで合格へと導いています。
そんな「薩川組」の取り組みを詳しくご紹介していきます。
【ルール・環境の整備】労働災害を機に実体験を語る安全講話を開催。事故を境に作業優先から安全優先へと意識が変化
2012年、ひとりの従業員が伐採作業中の墜落事故により、全身不随で手足も自由に動かせなくなるという重度の後遺症を負ってしまいました。梯子を使用し、高さ4.7mからの伐採作業中での事故でした。作業責任者としての資格を持ち、通年行う作業の一つのため、油断もあったのではないかと当時を振り返ります。作業手順を一つひとつ守れば防げた事故。このつらい経験を教訓に、自社内はもちろん、社外の同じように働く人に向けても、事故の怖さを伝える活動に力を入れるようになりました。

- ①事故防止につなげるための安全講話を開催……2016年から他企業からの依頼があってスタートした取り組みで、この講話は静岡をはじめ東京、大阪、京都、愛知、三重、岐阜など2024年10月時点で37箇所に及びます。受傷者本人による労働災害の体験談、家族や友人、会社との関係、そして会社側から労働災害を発生させてしまった後悔についてお話します。
- ②事故を教訓に整備した安全対策……工事着手前のリスクアセスメント作業手順書から、当日の作業内容を抜粋した作業手順書を作成し、日々の作業手順を点呼前に作業員全員で確認するようになりました。困難な作業現場も多く、これまでは何とかして作業を終わらせなければならないという作業を優先する意識の方が強めでしたが、事故を境に作業優先から安全優先へと意識が変わりました。
- ③女性が働きやすい環境整備……2021年に18歳の女性を正社員として採用。建設現場の技術者を希望しており、「薩川組」では初めての女性の現場作業員となりました。社内は男性ばかりで、当時33歳の男性が一番の若手。社内では戸惑いも多くありました。まずは、3階建ての社屋すべてのフロアに女性用トイレを設置。それまで和式トイレも残っていたため、これを機にすべてを洋式に改修しました。現場にも女性専用トイレを設置しています。

【キャリアアップ体制】個々のやりたい気持ちを応援。スキルアップにつながるよう、会社でも全力サポート
労働災害で障がいを負ってしまった従業員の方は、もともとは現場作業員でしたが、復帰後、鼻にマウスの代わりになるシールを貼り付けることでマウス操作と同様の作業が可能に。まずは写真整理から始めてもらいました。また、資格取得に関しては会社で全力サポートしています。
- ①障がい者もスキルアップへ……障がいを持つ方にはまず、工事現場の写真整理などを含む工事資料の作成から始めてもらいました。次第に会社のパンフレット作成など、本人のパソコンスキルに応じてスキルアップ。最近では土木積算を勉強中。同じ作業にとどまらず、少しずつできることを増やしています。
- ②資格取得は会社で全力サポート……土木施工管理技士、建築施工管理技士といった資格は、業務を行う上で必要な資格。会社の技術力向上のために、従業員には積極的に受験を促しています。受験資格を得られるタイミングになるときには、業務スケジュールを調整し、社長自らが問題を出題するなど、勉強を見ています。「勉強しておいて」では日々の業務に追われて勉強できないため、勤務時間内に勉強時間を確保することで資格取得をサポート。これまで受験対象になった方は、全員無事、資格取得を実現しています。
- ③取りたい資格は会社で費用負担……重機を使った作業にチャレンジしたいという従業員からの申し出があった際には、資格取得のための費用を会社で負担。また、重機自体も所有してなかったことから購入し、従業員のやりたいという気持ちに応えました。
- ④若年層の育成……2023年には新卒採用のためのイベントに初出展。インターンシップは30年ほど前から積極的に受け入れ、若者の育成にも力を入れています。
【社内推進体制】情報のクラウド化と業務の棚卸しで作業効率アップ&残業時間削減へ
在宅勤務者の登場により、社内データのクラウド化を積極的に推進。業務の棚卸しで作業効率があがりました。

- ①社内データのクラウド化……かつては社内ですべてが完結していましたが、在宅勤務者が登場したことにより、社内データのクラウド化を推進中。データ共有は実現済みですが、今後、クラウド化した積算ソフトの導入など、社外でも作業できる内容を増やしています。
- ②業務の棚卸しで残業時間の削減へ……工事現場で撮影した写真は、現場作業員が持ち帰り、帰社後にデータをまとめる作業を行っていました。しかし、納期が迫ると、これらのデータが溜まってしまいがちでした。在宅勤務者がいることで、これらの業務を見直し、分業することで現場作業員の負担が減り、作業の効率化や残業時間の削減にもつながりました。

【多様な人材の活躍推進体制】障がい者も外国人もシニアも。多様な人材が個々の能力に応じて活躍できる仕組みづくり
2025年度には高卒入社の若者から、障がい者、外国人、シニアまでと今後は多様な人材が社内に集まる環境に。昔とは異なる社内環境になりますが、個々のできることに応じ、多様な人材が活躍できる環境づくりを推進中です。
- ①障がい者の体調に合わせた柔軟な勤務時間……障がいを持つ方は、日中は訪問看護やリハビリがあり、また、日によって体調も異なることから、本人にどのタイミングでどのくらい業務を行うかを任せています。1日2〜3時間、週3日程度が多く、現在は、固定給で勤務してもらっています。講話会に出向くときには、奥さんが介助者としてバイトに来てもらっています。
- ②外国人の採用……2025年度には、静岡県が促進する海外高度人材受入のマッチング制度を利用し、1人のモンゴルの女性の入社が決まっています。社内で日本語のコミュニケーションがとれるよう、環境を整備したり、運転免許、土木施工管理技士といった資格取得の支援を検討中です。
- ③シニアも活躍……70代が2人、65歳以上が8人とシニアも活躍中。本人の体力と相談しながら、正社員のまま継続雇用を行っています。
今後の課題・予定
育児・介護休業の規定の制度を整え、静岡県次世代育成支援企業(こうのとりカンパニー)の認定をもらっています。現在は、育児・介護に該当する従業員がいませんが、今後のことを考え、準備を進めていければとのことです。
取組によって得られた声

障がいがあっても働ける時代になりました
樹木伐採作業中にはしごからバランスを崩して落下し、頸髄損傷という怪我を負ってしまいました。当日に夜間作業があったため、早く終わらせなければと作業効率を優先し、注意喚起や声掛け等を疎かにしたことが事故につながったと思っています。 事故後、復帰までの4年間、名古屋や島田の入院先まで会社の人が定期的に訪問してくれて、会社のことを教えてくれていました。今は、医療もITも進んでいます。自分の体の回復と同時に、仕事としても自分でも何かできることがあると思い、復帰を決意しました。
最初に労働災害の経験を話さないかと依頼をもらったとき、自分が人前に出ることなどできるだろうかという不安もありました。しかし、講話会をやってみてみなさんのアンケートを読むと、やってよかったと毎回実感します。自分の言葉で、起きたかもしれない事故が一つでもなくなればいいと思いこれからも続けていきたいと思っています。

建設業でも女性が働ける環境を用意してくれます
建設業の現場作業員として働きたいと思っており、そんなときに出会ったのが「薩川組」でした。以前は女性は事務の方しかおらず、お手洗いは共有だったそうですが私の入社を機に、社屋のお手洗いを改修。また、現場にも女性専用のお手洗いを用意してもらっています。少しでも働きやすい環境をと思う社長の気持ちが伝わってきました。
取組企業からの声

労働災害を一つでも防ぐことができれば
建設業において発生した死亡事故のおよそ4割が「墜落・転落」によるものとなっています。 墜転落事故は根絶していません。 私たちの言葉で、起きていたかもしれない事故が一つでも防ぐことができればと講話会を続けています。
障がいを負った場合、多くの場合、本人からの申し出で退職することもありますが、池ヶ谷さんはとてもやる気があり、手が回らないところのサポートをしてくれているため、とても助かっています。
今はいろいろなことができる時代になりました。ITの力を借りれば、どんどんできることが増えていくと思います。今まで建設業では少なかった障がいのある方、女性の方、外国人の方も、さまざまな人材が活躍できる場の創出を続けていきたいですね。
取材メモ(編集後記)
労働災害により、重度の障がいを負った方とその企業さんへのインタビューとあって、重苦しい内容になることを想像していましたが、とても前向きで明るい方々で驚きました。「二度と歩くことも、手を動かすこともできなくなる」と言われた中、ご本人の努力とご家族、周囲の方々、会社からのサポートもあり、仕事ができるほどにまで復帰。池ヶ谷さんがデザインされた会社案内のパンフレットも見せてもらいましたが、本当にさまざまな業務ができるのだなと感じました。
(文責:河田良子)
株式会社薩川組
- 所在地
- 静岡市清水区横砂南町14-1
- 電話番号
- 054-366-0315
- 業種
- 建設業
- 従業員数
- 29名
男性23名、女性6名
(正社員/男性23名、女性5名、派遣社員/女性1名、管理職/男性11名、女性2名)
※2024年9月30日時点※人数は取材時のものです
- 設立年月日
- 1966年3月26日
- ウェブサイト
- https://sazkawa.com