取組内容について

雑貨やノベルティグッズ、販促品の枠を超えて、オリジナルの高付加価値商品をつくることで、より豊かな生活を積極的に提案している「ナガハシ印刷」。描く力でアイデアあふれる商品を積極的に提案。印刷物をはじめ、のぼり旗類やノベルティ製作、翻訳対応、オリジナル商品等の開発等を行っています。従来はB to B中心でしたが、平成26年からは一般消費者に向けた新商品を開発。「いいかげんノート」は多数の全国メディアに取り上げられるヒット商品になっています。

IT活用やハードの整備で作業効率アップ

平成23年にiPadを導入し、営業資料やクライアントに提示するデザイン等をiPadで確認できるように。以前は営業が帰社しないとデザイナーに修正事項を伝えられず、デザイナーも帰宅時間が遅くなっていましたが、営業が出先からクライアントの修正内容をiPad上に記入し、デザイナーへすぐ送信。作業効率が格段に上がりました。
平成28年には、ITの活用とハード面の整備に着手。それまで使用していた動作が遅いパソコンを刷新し、デュアルモニターを導入しました。
そして、令和2年にはGoogleのクラウドサービスを導入。チャット機能を使っての情報共有や、コロナを機に導入した在宅ワークでの仕事状況の把握等に活用しています。これにより、ペーパーレス化にも繋がりました。
業務の効率化に伴い、以前は隔週の土曜は出社日となっていましたが、土曜出勤は年間5日程度に。年間休日は90日から120日と増え、平均残業時間も月40時間からわずか9時間まで削減しました。

IT活用やハードの整備で作業効率アップ
妊娠中・子育て中の女性に配慮した柔軟な働き方

妊娠中・子育て中の女性に配慮した柔軟な働き方

障がいを持つ子どもがいる従業員のために、フレックス制を導入。午前のみ、午後のみ、全日と子どもの都合に合わせて働けるよう、柔軟な勤務形態を用意しました。
新型コロナウイルスによる緊急事態宣言の際には、営業は支給されていたノートパソコンを持ち帰ってもらい、大きなパソコンを必要とするデザイナーには、会社の予備のパソコンを貸与し、自宅に持ち帰ってもらい対応。デザイナーの中には妊娠中の従業員もいたため、母子への健康を考え、完全在宅ワークに切り替えました。工場は2チームに分け、ローテーション制にすることで感染予防に努めました。
令和3年には、1時間単位での有給取得を可能にしました。病院や育児、看護、ワクチン・予防接種などに利用されています。

自分で目標を立て、スキルアップできる環境づくり

デザイナーは専門のソフトを扱える必要があります。入社した時点では、ソフトの基本的な操作はできる場合が多いですが、実務レベルで使うことは難しい状態。以前は、先輩が付きっきりで教えていましたが、令和元年には、自分で見て学べるデータベースで閲覧できるオリジナルテキストを作成。すでに何人かの新人デザイナーがこのテキストを活用しています。同様に、営業向け、製造現場向けのテキストも作成し、後輩指導に当たる先輩従業員の負担減になりました。現在は動画でのマニュアルも作成中。今後はよりわかりやすく学べるようになるとのことです。
また、令和元年から、色彩検定や簿記など、業務に必要な資格取得者には、合格時に受験料を含めた奨励金を支給。今後の海外展開も視野に入れ、英語関連の資格にも奨励金を出しています。
また、令和2年からは、3年サイクルでの目標を設定し、飽きずにキャリアアップできるようにしました。女性の場合は、産休、育休等で営業職から総務職に移る可能性もあり、それを踏まえて1年ごと定期的に目標の見直しをしています。また、オリジナル評価シートを作成し、上長と定期面談や、グループごとでの定例面談を実施。相互理解を深めるようにしています。

社会人インターンシップに参加し、視野を広げる

静岡市としずおか産学就職連絡会とが連携して実施している「社会人インターンシップ」(=中小企業の若手社員を対象とした、企業間の人事交流を含む一定期間の他社留学制度)を利用。販売店等へのインターンシップに参加したり、逆に他社からのインターンシップを受け入れたりしました。従来の業務からは得られない新しいアイデアが出たり、自分たちの仕事が他でも通用するということを認識する機会になったりと、視野が広がり、大きな実りとなりました。

社会人インターンシップに参加し、視野を広げる
女子企画チームをつくり、新商品を開発。やりがいへと繋げる

女子企画チームをつくり、新商品を開発。やりがいへと繋げる

令和元年、女性がやりがいを持って働ける環境の整備とジェンダーレスを目指し、営業、デザイナー、製造とそれぞれの部署が参加したチームを編成。女性目線で商品開発を行う女子企画チームと、新事業開発チーム、法人向け商品開発チームと3つのチームをつくりました。異なる部署での交流の場にもなっています。この取組により、女子企画チームからは、使い手・売り手・作り手それぞれが「良い加減」になるよう設計され、手書き風のゆるい罫線でストレスなく書ける「いいかげんノート」が誕生。令和2年には「しずおか女子きらっ☆ブランド」に認定されたほか、全国メディアにも多数取り上げられ、ヒット商品となりました。他にもさまざまな新商品、新規事業が進行中。自分たちのアイデアが形になり、事業として成り立つことで、従業員のやりがいへと繋がっています。

シニアや複業兼業人材を活用し多様な人材が活躍

60才の定年を迎えた後、1年更新の再雇用を行い、現在、3人のシニアが活躍中です。
また、複業人材も活用。関東経済産業局主催の「関東経済産業局における地域中小企業・小規模事業者の人材確保支援等事業」を利用し、オリジナル商品開発の際には、当時、自社のスキルではカバーできなかったマネジメントの部分を複業人材に依頼。また新商品のPRの際には、SNSに長けた別の複業人材にサポートを頼みました。
今後もシニアや複業兼業人材を活用するとともに、海外展開も見据え、外国人の活用も検討しています。

取組によって得られた声

SP事業部 本部長

森田洋正さん

1998年入社

印刷・広告業界というと、もともとは残業が多い業界。営業職なので、以前は出力したものを持ってクライアントの元に訪問し、17時や18時に帰社した後、デザイナーに修正してもらうという仕事の仕方をしていました。平成23年、iPadの導入を提案。クライアントからの修正を写真に撮って、すぐデザイナーに送れるようにしてもらいました。当時はまだiPadが発売してまだ2年目の頃。ベテラン社員にも使い方を覚えてもらいました。クライアントからは「印刷会社なのにペーパーレスにするの?」と言われることもありましたが、他社と違うことをアピールでき、差別化に繋がりました。
最近では、Googleのクラウドサービスの導入などがあり、さまざまな便利なツールが使えるようになりました。今まで外回りの営業だったので、社内のことや周りのことが見えていなかったのですが、クラウドの導入により、情報共有がしやすくなりました。メンバーの成長具合がわかるようになり、マネジメントに興味を持つようになり、自分への成長へと繋げられました。
仕事の効率化により、残業が少なくなり、家族との時間やプライベートの時間がとれるように。週3日は早く帰ると決めいていて、その姿を後輩にも見せつつ、クライアントにもそのことを伝えるようにしています。

SP事業部

増田綾子さん

2016年入社

これまで後輩には口頭で指導していましたが、オリジナルテキストの導入により教える側にとっても振り返りができ、共通認識を持つことができるようになりました。3年ごとの目標設定は、これまで日々の業務を淡々とこなすだけでしたが、目標があることで区切りをつけながらステップアップが目指せるように。自分の立ち位置や、自分が何をやりたいのか、やれるのかを考えられるようになりました。
Googleのクラウドサービスによりチャットが使えるようになったのは嬉しかったですね。電話があまり得意ではないので、社内の連絡がチャットで済むのは便利。若い人にとっても仕事しやすいと思います。また、データ共有が容易になり、たとえば見積もりの作成など、忙しくて対応できない時は仲間同士で代わりの対応が可能に。仕事をシェアできるようになったので、残業が少なくなったと思います。

取組企業からの声

専務取締役

長橋健太郎さん

仕事三昧で残業が多かった会社。IT化とハードの整備で効率アップ

IT業界で経験を積んだ後、平成28年に入社しました。社員も仕事三昧で、残業も当たり前だったような会社。正直なところ、家事も子育てもある女性が働けるような環境ではありませんでした。パソコンを新しいものにし、IT化を勧めることで、作業効率が格段にアップ。残業時間の大幅な削減の他に、有給取得率も上がりました。冠婚葬祭や急病を除いた10日の休暇取得を目標とし、今では平均11.3日になりました。
また、年齢役職関係なしで意見が言い合える「改善会議」には、幹部のほか、男女比が1:1になるようにし、各部署から1名ずつが参加。毎週開催しており、事前に全社員が閲覧可能な共通の記入シートに今週起こったことを記入してもらい、それをもとに会議を行っています。さまざまなメンバーが参加することで、風通しがよくなり、各部署の問題点や悩みを共有できるようになりました。普段、クライアントからの声を知る機会が少ないデザイナーも、この記入シートを通してクライアントの声を知ることができるようになったのは嬉しい効果でした。

取材メモ(編集後記)

長時間労働が常態化しがちな印刷・広告業界の中で、残業時間を月9時間にまで抑えられているのは、とても見事なことだと思います。大幅な業務改善と、女性が働きやすい環境づくりのサポート、そしてやりがいとキャリアアップへと繋がる商品開発チームの編成など、様々な取組とその結果は、印刷・広告業界への新風になっているのではないかと感じました。

(文責:河田良子)

ナガハシ印刷株式会社

所在地
静岡市駿河区みずほ1-35-3
電話番号
054-257-0111
業種
印刷・広告業
従業員数
27名 

男性18名、女性9名

※人数は取材時のものです

設立年月日
昭和45年6月1日
ウェブサイト
http://www.nagahasi.com/
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