取組内容について

創業80年を超える北川グループは、「北川木材工業株式会社」「有限会社キタガワビジネスサービス」「有限会社巴川加工所」「有限会社北川エンタープライズ」の4つの会社をグループに持ちます。その中でも「有限会社キタガワビジネスサービス」は、人材派遣業、有料職業紹介業、業務請負業を営む総合人材サービス企業です。

仕事を細分化し「誰でもできる作業」へ。70歳以上の女性も活躍

北川グループは、2007年、前代表取締役の急逝に伴い、北川攝子さんが専業主婦から代表取締役に就任。そして、2013年に、公認会計士として東京で研鑽を積んでいた北川信央さんが静岡に戻り、取締役に就任しました。

北川攝子さん・信央さんは、「カイゼン(改善)」を掲げ、さまざまな業務の見直しを実施。社内の資源を見直し、コスト削減を目指しました。そこで目に止まったのが、シニアの人財活用。「もともとはたくさんの工程を一人で担っており、作業を煩雑にしていましたが、業務を細分化することで、『誰でもできる作業』へと改善していきました」と北川信央さんは話します。シニアの中には、女性パート社員もいるそうで、2時間のみ、週3日といった勤務も可能。シニアにも働きやすい勤務体制を整えました。

「シニア層は、勤労意欲が非常に高く、働くことへの感謝の気持ちを持っています。会社の看板が汚れていてはいけないと、毎朝、外の塀まで掃除をしてくれる70代の女性パート社員も。整理整頓好きの方も多く、職場環境が整えられていきました。今でこそ、整頓された現場ですが、以前は物が積み上がり、あまりきれいとは言えない環境でした」。

仕事を細分化し「誰でもできる作業」へ。70歳以上の女性も活躍
20代前半の女性リーダーが誕生

20代前半の女性リーダーが誕生

業務を「誰でもできる作業」へ見直していったことで、シニアはもちろん、子育て中の女性にも働きやすい環境になりました。そして、少しずつ若い女性の応募が集まるようになったといいます。

ちょうど同じ頃(2013年)、製造部門での募集に対し、高校を卒業した18才の女性社員のYさんとHさんが北川グループに入社。OJTとOFF-JTを積み重ね、「水色社員」(=ブルーカラーとホワイトカラーの両方の技能を習得した社員)として研鑽を積みました。そして、入社2、3年目には相次いでサブリーダーに昇格。そして、2016年にはリーダーになったそうです。

「彼女たちは、製造現場でも作業しますし、生産計画をExcelで作り、人的マネージメントも行います。まだ22才と若いですが、シニアをはじめとした周囲の人に支えられながら、現場の雰囲気も和気藹々としているようです」と北川信央さんは話します。

YさんもHさんも、リーダーとして取引先へ訪問することもあります。二人は、コミュニケーション能力も高く、女性ならではのきめ細やかな対応で、業務へのクレームが以前よりかなり減ったそうです。

「働く女性は、家庭も仕事もマルチにこなす人が多い印象です。意見もしっかり言いますし、伸びしろが大きいと思います」と信央さんは話します。

「作業台が高いから、女性にも届く高さにしてほしい」「日差しが強いので、ブラインドをつけてほしい」といった意見も出て、職場環境がさらに整えられてきました。

もともと、北川攝子さん・信央さん自身も現場主義を掲げ、作業着を来て泥だらけになって仕事をしていたそうです。そのため、経営者の視点だけでなく、現場の視点も持ち合わせているからこそできた、仕事の細分化・効率化だと思われます。

育児中の社員の生産量をコーディネート。短納期・高品質を達成

これまで女性が少なかった企業ですが、業務を「誰でもできる作業」にし、シニアや女性を積極的に採用。これにより、現在では、北川グループの製造部門で働く社員のうち、約40%が女性になりました。そして、2017年9月には、生産管理部門で働く女性が、初の産休を取得しています。

育児中の女性の社員出勤状況と生産量をコーディネートすることで、生産性をあげ、短納期・高品質を実現しているそうです。

全社員、毎日残業ゼロ。家族との時間を大切にできる

2013年の「カイゼン(改善)」前は、一つの仕事に対して専任の社員しか作業できなかったため、遅くまで残業するのが当たり前の風潮がありました。しかし、仕事を細分化し「誰でもできる作業」に改善したため、仕事の分担が可能になり、定時の17時30分(製造部門は17時定時)に帰宅が可能になりました。「ノー残業デー」を掲げる企業も多いですが、北川グループは毎日が「ノー残業デー」。家事に育児に忙しい女性でも、仕事との両立が可能な環境が整っています。

取組企業からの声

代表取締役 北川攝子さん / 取締役 北川信央さん

「人が人を呼び、人に関する課題を解決する企業でありたい。」

「『カイゼン×若手×シニア』が重要になってくると考えています。
以前は、一人ひとりが抱える作業量が多く、現場では人が足りないと言われていました。しかし、人を増やせば生産性が上がるというわけではありません。シニアに向けた仕事を創出することで、結果的に女性をはじめとする全社員に働きやすい環境を用意することができました。
勤労意欲が高いシニアは、現場の雰囲気をとてもよくしてくれて、多くの悩みを抱える若手のよい相談相手にもなってくれています。人と人との関係性を大切にしながら、コストを削減し、情報整理をする『カイゼン』を行うことで、さまざまな課題を解決できるのではないかと考えています。」

取材メモ(編集後記)

一人ひとりの人間性を重視して採用活動を行なっている北川グループは、現在、女性のさらなる活躍の場創出のため、「保育事業×コアワーキングのシェアオフィス」の新規事業を計画中。2018年度より静岡市葵区安東で開始予定とのことで、子どもをすぐ近くで預けながら、クラウドソーシングの仕事を紹介することを計画しているそうです。人材サービス業を営む企業なだけに、その取組は新しい女性の働き方を提案してくれそうで、とても楽しみです。

(文責:河田良子)

有限会社 キタガワビジネスサービス

所在地
静岡市清水区東大曲町9-10
業種
サービス業
従業員数
133名 

男96名、女36名 + 本部8名(男2名、女6名)
※2017年8月31日時点

※人数は取材時のものです

設立年月日
1988年4月1日
ウェブサイト
http://www.kitagawa-group.jp/kitagawa_bs/
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